会長挨拶
大阪市立総合医療センター 副院長
市場 博幸
NMCS(Neonatal Mutual Cooperative System、新生児診療相互援助システム)は大阪で新生児に対する専門的な医療に取り組んでいる27の病院によって組織されています。1977年の創立以来この組織の目的を「NMCSの目的」として明文化しています。その内容は1)中等度ないし高度の新生児診療を必要とする新生児は産科からの紹介に応じ全数これを受け入れるため協力すること、2)新生児診療施設相互に交流を深めその診療内容を向上させること、3)周産期医療の地域診療体制の整備のため具体的活動を推進することです。
NMCSではこの「NMCSの目的」を達成するために、これまで様々な方略を用いて具体的な活動を行ってきました。情報センター、共通のデータベース、三角搬送も含んだ多くの搬送を行うことができる搬送体制など先進的なシステムを次々と作り上げてきました。その結果大阪で出生した入院が必要な新生児は全例NMCSで受け入れるのみならず他府県で出生した新生児にも対応しています。
またNMCS全施設の共通のデータベースや新生児死亡登録システムを構築し、蓄積されたデータを解析して臨床現場にフィードバックしています。症例検討会や研修会も定期的に開催して各施設が診療能力を向上させて来ました。大阪府医師会の新生児蘇生講習会は全国に先駆けて各施設の協力のもと長年にわたって開催しています。数年前から新たに「とことん新生児セミナー」を開催して、若手医師や医学生への啓蒙と教育も手掛けています。
NMCSが発足して10年後の1987年にOGCS(産婦人科診療相互援助システム)が発足し、以後のNMCSの活動はOGCSと協力しながら行ってきました。創立30周年の2007年ころからは周産期医療と他の分野の連携が求められるようになります。日本の各地で生じた救命救急疾患合併妊婦の受け入れ不可能問題は、周産期センターと救命救急センターの連携を促す端緒となりました。また精神疾患や心理的問題を抱えた妊婦に対する受け入れ態勢も整備されてきました。さらに社会的、経済的な問題をかかえた母子への対応も行政と共同しながら行うようになってきました。近年は大規模災害時の周産期医療体制についても受け入れ体制を構築し、2018年の大阪北部地震では実際に活動を行いました。さらに男女共同参画社会への対応や周産期医療従事者の働き方改革は喫緊の課題です。
このようにNMCSはその時々の要請に対して少しずつ変化しながら対応してきました。一方でNMCS参加施設の仲の良さとそこから生じた円滑な協力体制は創設以来変わることがありません。これからも時代の変化が様々な要請をNMCSに突き付けてくることと思いますが、NMCSは創設期から変わらない協力体制を維持しながら、細部を柔軟に変化させて対応していくものと確信しています。どうぞNMCSをよろしくお願い致します。